電子ネットワーク事業における倫理問題に係る
自主ガイドラインについて

                        平成8年2月16日
                        通 商 産 業 省
                        電子ネットワーク協議会

1.最近のパソコン通信やインターネットの発展に伴い、電子メール、電子掲示板などの各種サービスにおいて、他人への誹謗中傷、公序良俗に反するような情報の提供など様々な倫理問題が顕在化してきている。
 しかしながら、このようなネットワークを巡る倫理問題については、従来、標準的な指針、基準もなく、個々の電子ネットワーク運営者の判断に委ねられてきたところである。

2.かかる状況に鑑み、パソコン通信サービスを提供する国内の事業者を会員とする電子ネットワーク協議会(注1)の中に基本問題分科会を組織し、電子ネットワークを活用する上での倫理的観点から必要であるガイドラインを策定すべく検討を進め、今回、「電子ネットワーク運営における倫理綱領」及び「パソコン通信を利用する方へのルール&マナー集」を作成した。
 この種の検討は、米国においてインターネット技術タスクフォース(IETF) によるネチケットガイドラインが昨年10月に作成されているのみであり、我が国では初めての成果である。

3.通商産業省は、従来より、コンピュータネットワークにおけるプライバシーやセキュリティの問題に取り組んできたところであるが、パソコンの普及が急速に進展し、パソコン通信、インターネットを活用した電子商取引(エレクトロニックコマース)等に対する期待が高まっている中で、様々な倫理的な問題が、こうした情報化の流れを阻害することに対する懸念を抱いていたところである。他方、過剰な規制をかけることは、ネットワーク上での自由な情報の流通を阻害することにつながるという懸念も指摘されている。

4.こうした状況の中で、通商産業省としては、この度、ネットワーク事業者により業界としての自主的なガイドラインが策定されたことは非常に重要であり、かつ高く評価できるものと考えており、今後、このガイドラインに沿った運用がなされ、倫理問題の解決が図られることを期待したい。

5.なお、商務流通審議官及び機械情報産業局長の私的研究会である「電子商取引環境整備研究会」においても、電子商取引に伴って生じる様々な制度的課題(損失負担、国際取引、電子決済等)の中の一つとして、かかる倫理的な問題について、有識者、ネットワーク事業者、消費者代表等の方々にも参加していただき、鋭意検討を行っているところであり、そこでの議論においても、今回のガイドラインを踏まえたものとしていきたい。

6.「電子ネットワーク運営における倫理綱領」の要点
 本綱領は、電子ネットワークを介してパソコン通信サービスを提供する国内の事業者および主催者に対して、その運営理念や運営規模あるいはその運営形態にかかわらず、誹謗中傷、公序良俗違反など様々な倫理問題が生じないようにするための基本理念および運営基準を提示したものである。
 基本理念としては、言論の自由、人権の尊重など日本国憲法の精神の尊重、公序良俗の尊重、知的所有権やプライバシーに関して関係者が不利益を被らないよう配慮すること、良きマナーの啓発、寛容の精神の醸成があげられている。
 運営基準としては、会員規約の整備、対応窓口の明確化と管理体制の整備、啓発活動の徹底、各種システムの整備及び対応方針の明確化について、運営者として行うべき事項が示されている。

7.「パソコン通信サービスを利用する方へのルール&マナー集」の要点
 パソコン通信の世界も、一般社会と同じように、多くの人が様々な目的をもって参加し、その利用形態もまちまちである。このような電子ネットワーク社会の中で楽しく、そして役に立つ交流をスムーズに行っていくためには、一般社会と同様に、お互いが会員双方の立場を尊重し、優しさと思いやりを持つようなエチケット、マナーを守って、節度ある行動を心掛けることが非常に大切である。また、普段の生活ではうっかり見落としがちな著作権などの様々な権利や、パソコン通信のルールなどにも気をつける必要がある。
 本ルール&マナー集は、上記のような観点から健全なパソコン通信サービスの成長、発展に寄与するべく、利用者に対して、基本原則、ユーザID/パスワード、電子メール、電子掲示板や電子会議室、著作権の取り扱い、ウイルス対策などに関するルール、マナーなどについて例を交えながらまとめたものである。

8.本倫理綱領及びルール&マナー集は、当協議会会員の他に、会員数1千人以上のパソコンネット約100局および主要インターネット・プロバイダに本日送付した。当協議会としては、ネット運営者を対象とする相談窓口の開設など、今後も普及啓発活動及びフォローアップを推進していく予定である。また、本倫理綱領及びルール&マナー集は当協議会によるオンラインデータベース「ねっとバンク」(注2)やインターネット上のホームページ(http://www.nmda.or.jp/enc/)にも掲載し、利用者からのアクセスを可能にしている。

(注1)「電子ネットワーク協議会」
 パソコンネットワークなどの振興を目的に平成4年10月に発足した組織で、事務局は財団法人ニューメディア開発協会内にある。商用ネット事業者、コンピュータメーカ、通信ソフトハウス、アプリケーション事業者などの法人会員96社、学識経験者などの特別・個人会員18名、公共ネットワークなどに関心を有する協賛自治体52団体から構成されており、会長は関本忠弘(日本電気株式会社会長)である。

(注2)「ねっとバンク」
 全国パソコンネット局実態調査の結果に基づき、利用者がネット局情報を検索できる無料のオンラインサービスで、PC-VAN、NIFTY-Serve上で利用することができる。アクセス方法は、PC-VANではJ NETBANK、NIFTY-ServeではGO NETBANKで入れる。「ねっとバンク」には、電子ネットワーク協議会からのお知らせ、月例セミナーのご案内、講演記録なども掲載されている。

問い合わせ先

 通商産業省 機械情報産業局電子政策課 伊原、井上
    電話  03-3501-2964
    FAX  03-3580-6403
    E-mail itaa2120@miti.go.jp

 電子ネットワーク協議会 事務局 山科、月崎
    電話 03-4357-0671
    FAX  03-3451-9604
    E-mail press@nmda.or.jp


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