情報倫理教育への取り組みについて

 

東金女子高等学校 高橋 邦夫

 

 

本校は明治20年創立で,女子高校としては千葉県で最も古い学校であるが,コンピュータ教育に関しては先進的に取り組み,1984年には55台のパソコンLANを設備したコンピュータ教室を設けてプログラミングやワープロ技能の指導を本格化し,現在はコンピュータ教室3室(Windows95, MacOS, MS-DOS と,ワープロ教室1室を擁して全生徒に情報処理・文書処理科目の学習を展開している。また,コンピュータのグラフィック機能を利用して色彩教育に取り組み,カラーコーディネータ検定なども実施している。

100校プロジェクトに参加してからは,情報教育のカリキュラムにおいてインターネット利用のためのネットワークリテラシーを扱い,一般教科および卒業後の社会生活においてインターネットを活用するための素養の養成を図っている。内容面ではアプリケーションソフトや情報サービスの利用方法といった操作技能の修得が大きな柱になるが,もう1つの大きな柱として情報通信倫理に関する知識や態度の養成がある。物理的な隔たりがあるとはいえネットワークを経由した外部との交流は,教室という隔離された空間を離れて生徒たちが直接一般社会に関わる状態であり,社会生活のマナーや危険回避の常識的センスが試される場となるため,情報通信ネットワークに対応した情報倫理教育への取り組みが必要となる。

情報通信倫理教育に関する取り組みは,教員研修,教材開発,生徒指導の3つの活動に大別できる。生徒指導のために教材開発が必要であり,そのための教員研修も大切という位置づけである。

 

  1. 教員研修
  2. インターネットという新しいメディアに触れて,まず教師自身の経験と知識が不足していることが問題となる。初体験の分野であり教えられるほどの知識がない。端的にいえば,実際にインターネットに触れて情報収集や種々のコミュニケーション体験を積むことが最良の研修となる。インターネットの利用になるべく多くの時間を割くこと自体が教材研究であり,またコミュニケーション活動に積極的に取り組むほど早く経験を積むことができる。メイリングリスト等を通じて全国の同じ問題意識を持つ教師たちと意見情報交換の交流することも実りある研修となっている。

     

  3. 教材開発
  4. インターネット利用を始めた1995年当時,ネチケットの総合解説文献で日本語で読めるものはなく,先達から指導を受けながら体験を通じて身に付けるしかなかった。この状態では生徒達にネットワーク利用時のマナーを指導する際に支障があるので,英語文献の邦訳により教材を作成しようと思い立った。100校プロジェクト参加校を中心とした翻訳ボランティアの協力により1996年初頭に完成したネチケット教材がアーリーン・リナルディ著「ザ・ネット:利用者の指針とネチケット」日本語版(http://www.togane-ghs.togane. chiba.jp/netiquette/fauj/Index.html)である。同じ時期に邦訳した「ネチケット・ガイドライン」(RFC1855, FYI-28:邦訳 http://www.togane-ghs.togane.chiba.jp/netiquette/ rfc1855j.html)もまた優れた教材となるものであった。

    これらのコンテンツと,教材を求めてWWWによりネチケットに関する文献を探した際のブックマークをもとにして,19963月に「ネチケット情報(ネチケット・ホームページ)」を開設(http://www.togane-ghs.togane.chiba.jp/netiquette/)したが,ネットワークエチケットに関する情報提供として1日あたり600アクセスの好評を得ている。

    また,1996年9月に発足した「わかなプロジェクト」においては,学校教育でインターネットを利用する際の利用規定やガイドラインの見本を共同作成する活動が進行している。(http://www.edu.ipa.go.jp/wakana/

     

  5. 生徒指導

上記のような教材を用いながら授業において情報通信倫理の指導を行っている。まず始めにインターネット利用にあたっての態度,心構えを指導し,その後は体験しながら電子メール,WWWなど利用するサービス毎のエチケットの細目を指導するという手順で行っているが,総則となるのは以下の項目である。

 自分ひとりでコンピュータに話しかけているのではなく,相手はネットワークでつながった人間である。メイリングリストや掲示板では大勢の聴衆の前で話をするのと同じ状態である。

 詐欺や偽情報がある。現実性チェックの常識を働かせよう。信頼できる情報以外は信用せず,他人に流してもいけない。閲覧時には良質な情報を求めよう。

 個人情報保護にも留意。悪用される可能性を考慮しておくこと。(プレゼント付懸賞に応募したつもりが,氏名住所電話が名簿業者に流れることも)

 初心者は知らないうちに大きな迷惑をかける可能性もある。ネチケットを知ろう。知的財産権の保護についても良く知っておこう。

ネットワーク社会への貢献。

情報はギブ・アンド・テイク。質問をしたらサマリ(まとめ)を投稿するなど,自ら貢献する態度が良いネットワーク市民の条件。

〔平成9年度新100校プロジェクト関東地区活用研究会事例発表資料〕

1997101日 東京全日空ホテル

※レジュメ掲載以外の発表内容は別掲の発表用スライドをご参照ください。