惑星科学のための宇宙探査機

ボイジャー (Voyager)


月、惑星、太陽、小惑星、彗星といった太陽系の諸天体の科学探査を目的として、 人類がこれまでに打ち上げを行った宇宙探査機は無数にあります。ここでその すべてを紹介することはとてもできそうにありませんが、そのうちのいくつかを ご紹介します。ここで紹介されていない宇宙探査機やさらに詳しく調べたい方は、 このページの最後の方にある『宇宙探査機についてもっと 詳しく知りたいとき』の項目をご覧下さい。ここで紹介されている内容は、 おもに USENET のニュースグループである sci.space の FAQ(質問と回答集)から引用しました。

任務を終えた宇宙探査機

ルナ2号 (Luna 2)
1959年、はじめて の表面に突入しました。 (旧ソビエト連邦)

ルナ3号 (Luna 3)
1959年、はじめての裏側の写真を撮影しました。 (旧ソビエト連邦)

マリナー2号 (Mariner 2)
1962年12月、はじめて金星への接近に成功しました。 この探査機の観測結果から、金星がおもに二酸化炭素からなる大気と厚い雲に 囲まれていることと、金星の表面が非常に高温(当時の観測結果では摂氏約 480度、現在では約530度とされています)であることが確認されました。

(もっと詳しく知りたい人は、NASA:米国航空宇宙局から提供されている マリナー2号のホームページ(英語)をご覧ください。)

マリナー3号 (Mariner 3)
1964年11月5日に打ち上げられましたが、地球軌道から火星へと向かう軌道 に投入されたときに防護カプセルの切り離しに失敗しました。その結果、 太陽電池に太陽光が届かず、すぐに蓄電池の電力がなくなって機能を停止 しました。現在は太陽を中心とする軌道を回り続けています。この探査機は マリナー4号とともに火星に接近して観測を行う 予定でした。

マリナー4号 (Mariner 4)
マリナー3号の姉妹探査機。こちらのほうは1965年に実際に 火星に到達して初めての火星表面のクローズ アップ写真(全部で22枚)撮影に成功しました。この際の観測から、 火星表面がクレーターで覆われていること、火星の大気がそれまで考え られていたよりもずっと薄いことがわかりました。このことから、多くの 科学者たちは、火星が地質学的にも生物学的にも死んだ星であるとの結論 を下しました。

マリナー9号 (Mariner 9)
打ち上げに失敗したマリナー8号の姉妹探査機。1971年にはじめて 火星の回りを周回する探査機になりました。 火星表面にある巨大な火山を発見したり、かつて水が火星表面を流れて いた証拠である深い渓谷が存在することを示すなど、赤い惑星と呼ばれる 火星に関する初めての観測結果を次々と地球に送信してきました。また、 火星の2つの衛星であるフォボスダイモスのクローズアップ写真もこの探査機 によって初めて撮影されました。

アポロ (Apollo)
1969年から1972年にかけて6回の有人着陸 を行い、月の土を地球に持ち帰りました。

アポロのホームページ

ルナ16号 (Luna 16)
1970年に無人でに着陸し、月の土を地球 に持ち帰りました。(旧ソビエト連邦)

パイオニア10号 (Pioneer 10) パイオニア11号 (Pioneer 11)
パイオニア10号は、1973年、初めて木星 に接近した探査機です。パイオニア11号は11号 に続いて1974年に木星に接近し、さらに1979年には初めて土星への接近にも 成功しました。パイオニア10号と11号は小惑星帯と木星の強い磁気圏を 通過しても正常な機能を失わないことが可能かどうかを調べることも 重要な任務の一つでした。小惑星帯の通過は問題となるような危険は ありませんでしたが、木星の磁気圏にとらえられたプラズマ粒子には あやうく衝突してダメージを受けるところでした。この際の観測データ はボイジャー計画の成功に欠かせない貴重な データとして活かされました。

パイオニア10号と11号に搭載された発電気の電力は次第に低下してきている ものの、どちらの探査機もまだ正常に機能し続けており、探査機から送信さ れる電波はいまだに地上で受信されています。ただし、パイオニア11号 は、搭載されたどの科学観測機器を動作させるにも十分な電力を発生させること ができなくなりました。そのため、今後は定常的な運用は行われないでしょう。 しかし、低電力の状況下での電子機器の性能を調べるため、定期的に 技術的なデータは取得されることになっています。パイオニア10号は 現在でも貴重な科学データを取得し続けています。

太陽系の外へと向かうはじめての探査機として、パイオニア10号と11号には 金でメッキされた縦 15.2 cm 横 22.9 cm の大きさのアルミニウムの 銘板が 機体にボルトで取り付けられており、そこには地球外知的生命体に遭遇した 場合を想定して人類からのメッセージが刻まれています。

(さらに詳しい説明(英語)は パイオニア計画のホームページと米国航空宇宙局(NASA)スペースリンクの パイオニア10号 パイオニア11号のホームページ、および米国航空宇宙局(NASA) エイムズ研究センターから提供されている パイオニア計画の現在の状況 の各ページをご覧ください。)

マリナー10号 (Mariner 10)
いったん金星に接近し、金星の重力を効果的 に利用して1974年初めて水星に到達しました。 金星に接近した際、紫外線カメラを用いてマリナー10号以前に撮影されたこと のない金星の厚い雲の細かな様子の撮影に成功し、金星の雲が4日で金星 表面を1周していることを明らかにしました。マリナー10号は1974年から 翌年にかけて姿勢制御用の燃料を使い果たすまでに全部で3回水星への 接近を繰り返しました。この観測によって、水星の表面が無数のクレーター で覆われていること、質量がそれまで考えられていたよりもかなり重い ことが明らかになりました。このことを説明するため、水星の中心部には 水星の質量の75%を占める鉄のコア(内核)があると考えられました。

(さらに詳しい説明(英語)はジェット推進研究所から提供されている マリナー10号のホームページをご覧ください。)

ベネラ7号 (Venera 7)
1970年、金星の表面から観測データを地球に送信 してきました。地球以外の惑星の表面から観測データを地球に送ってきた のはこの探査機が初めてでした。

ベネラ9号 (Venera 9)
1975年、金星に初めて軟着陸をし、金星表面の 写真映像を撮影しました。地球以外の惑星に軟着陸したのはこの探査機が 初めてです。(旧ソビエト連邦)

パイオニア・ビーナス (Pioneer Venus)
1978年、金星の回りを周回する軌道船から4つ の観測船を切り離し、金星表面の高品質な初めての地図を作成しました。

(詳しくは米国航空宇宙局(NASA)スペースリンクの 情報やカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の パイオニア・ビーナスについての解説をご覧ください。)

バイキング1号 (Viking 1)
バイキング1号は米国フロリダ州にあるケープカナベラル空軍基地から1975年 8月20日にタイタン3E−ケンタウルスD1ロケットによって打ち上げられ ました。1976年7月19日に火星軌道に到達、翌20日には着陸船がクリス高原 の西の斜面に軟着陸しました。着陸船は軟着陸後すぐに火星に微生物が生息 するかどうかの調査を計画通り開始しました−この調査の結果の解釈に ついては、いまだに火星に生命が存在しているかどうか議論が別れています。 また、着陸船から送られてきた着陸船周囲のカラーパノラマ写真は世界に 衝撃を与えました。それまで火星の空の色は暗い青色と考えられて いましたが、バイキング1号の送ってきた写真の空はピンクがかった色 をしていました(空の色がピンクがかっているのは、火星の赤い細かな 土が塵となって薄い大気中に漂い、それが太陽の光を反射させている ためだと考えられています)。

バイキング2号 (Viking 2)
バイキング2号は1975年9月9日打ち上げ、1976年8月7日に 火星軌道に到着しました。軟着陸船が ユートピア高原に着陸したのは1976年9月3日でした。バイキング2号 の行った観測はバイキング1号の観測とほぼ同じですが、バイキング1号 では正常に機能しなかった地震計の観測も順調に行われ、『火震』が1回 記録されました。

バイキング1号の着陸船からの信号は1982年11月11日を最後に途絶えてしまい ました。その後、6ヵ月半にわたってバイキング1号の着陸船との交信を再開 させる試みが続けられましたが、1983年5月21日に計画は正式に終了となりました。

バイキング1号の着陸船は、その後着陸船画像処理チームのリーダーとしての功績 をたたえてトーマス・A・マッチ (Thomas A. Mutch) 記念観測所と名づけられ ました。観測所の名前を示す銘板は、将来の有人火星探査のときに着陸船に 取り付けられることになっており、それまでの間は米国ワシントンDCの 国立航空宇宙博物館に大切に保存されています。

 (詳しくは米国航空宇宙局(NASA)ジェット推進研究所の 情報や WWW の バイキング計画のホームページをご覧ください。)

ボイジャー1号 (Voyager 1)
ボイジャー1号は1977年9月5日に打ち上げられ、1979年3月5日に 木星のそばを通過、1980年11月13日に 土星のそばを通過しました。ボイジャー 2号は1977年8月20日に打ち上げられ、1979年8月7日に 木星のそばを通過、1981年8月26日に 土星、1986年1月24日に 天王星、1989年8月8日に 海王星のそばをそれぞれ通過しました。 ボイジャー2号が4つもの外惑星に次々と接近して観測を行うことが できたのは、4つの惑星の位置の組み合わせが絶妙だったためで、 このようなチャンスは計算によると189年に1度しかありません。 ボイジャー1号は土星のそばを通過するときに最適な軌道を選んで やれば冥王星へと向かう軌道に乗せることも 可能でしたが、ジェット推進研究所は冥王星の観測を行うかわりに 土星の衛星ティタンにできる限り接近して観測を行うことを優先しました。

ボイジャーの2つの探査機により、4つの巨大惑星(木星・土星・天王星・ 海王星)とその衛星や環に関する私たちの知識は飛躍的に深くなりました。 まず、木星の大気の複雑な運動の様子が明らかになり、雷や オーロラも確認されました。また、木星に 3つの衛星が新しく発見されました。さらに、木星に環があることが発見された ことと、木星の衛星イオに硫黄を成分に含む活火山の活動が確認されたことは 世界中の人々を驚かせました。イオの火山活動は木星の磁気圏の状態にも 深く影響を与えていることもわかりました。

土星への接近のときには、土星の環が1000本を超える細い帯状の環から なっていることと、7つのそれまで知られていなかった衛星が新たに 発見されました。そのうちのいくつかの衛星は土星の環を重力的に安定 な状態に保つためにボイジャーが土星に接近する前から存在が予測されて いた衛星で、そのような衛星は『シェパード衛星(羊飼い衛星)』と 呼ばれます。土星の大気の動きは木星に比べるとおとなしく、巨大な ジェット気流が乱れることなく流れています。33年の周期で大白斑と 白い帯が交互に現われる現象が知られています。土星の衛星 ティタンの大気は透明度が低くよどんで いました。また、別の衛星ミマスには隕石 の衝突でできた大きなクレーターがひとつあり、映画『スターウォーズ』 に出てくるデススターにそっくりです。土星の環に発見された不思議な 構造‥2本の環がからまりあっていたり、環がねじれていたり、土星の 中心から放射状に濃淡の模様が見られたり‥はいまだにどのようにして 形成されたのか明確な説明が与えられていません。

ボイジャー2号 (Voyager 2)
ボイジャー2号は、宇宙技術の粋の限りを結集して、木星と土星に続いて さらに天王星 海王星へと航海を続けました。天王星は一見単調な色で模様もなく のっぺりとしていました。しかし、目に見えない不思議な性質を持って おり、天王星の回転軸は完全に横に傾いていますが、磁気軸はその回転 軸からもおおきくずれて傾いていることがわかりました。そのため、 天王星の磁気圏は特殊な構造をしています。天王星の衛星 アリエル ミランダの表面はどちらもいろんな地形が継ぎはぎに組み合わされた ような奇妙な性質をもっていることもわかりました。ボイジャー2号が 天王星に接近する前から天王星には環があることがわかっていましたが、 ボイジャー2号の接近によって新たに1本の環と10個の新しい衛星が発見 されました。

天王星とは対照的に、海王星の大気の運動は活発で、無数の雲の形も はっきりと確認されました。ボイジャー2号が観測を行うまでは、海王星 には断続的に途切れ途切れの環があるのではないかとされていましたが、 じつはこれは1本につながった完全な環で、ところどころが斑点状に太く なっているのだということがわかりました。また、新たに2本の環と6個 の衛星が発見されました。海王星の磁気軸もまた傾いていました。海王星 の衛星トリトンの表面にはマスクメロンの ような模様と液体の噴出する間欠泉のような地形が発見されました。 (絶対温度38度の世界で液体でありえる物質とはいったい何でしょう?)

もし今後もボイジャーが順調に飛行を続ければ、2つの探査機との交信 は2030年ころまでは十分続けることができそうです。燃料である ヒドラジンはまだ十分に残っています‥ボイジャー1号は2040年まで、 ボイジャー2号は2034年まで姿勢を制御することが可能です。ただ、 ボイジャーがいつまで観測を続けることができるかはRTG (RTG : Radio-isotope Thermalelectric Generator ‥ 放射性同位 元素から発生する熱を利用した発電機)と呼ばれる発電機の出力が いつまでもつかにかかっています。2000年までにはUVS(UVS : Ultra-Violet Spectrometer ‥ 紫外線分光装置)が必要とする電力は 供給できなくなり、2010年までにはすべてのセンサーの電源を同時に 入れておくことができなくなります。そのときには、搭載されている センサーのうちのいくつかの電源を切ったり入れたりして時間を 区切って観測を行うようになります。このようにして10年間程度は 観測を継続することはできますが、その後は電力が不足して探査機を 正常に機能させることはできなくなるでしょう。

(さらに詳しく知りたい方は、米国国立宇宙科学データセンターの 素晴しい ホームページ、ジェット推進研究所から提供されている 資料 ホームページ、エイムズ研究センターから提供されている 総合的な情報をご覧ください(英語)。)

ジオット (Giotto)
ジオットは1985年7月2日にアリアン1型ロケットによって打ち上げられた ESA(欧州宇宙機構)の探査機で、1986年3月13日に ハレー彗星の中心核から540±40kmにまで 接近しました。ジオットにはカラーカメラを含めて10種類の観測装置が 搭載され、探査機がハレー彗星に最も近づく寸前に地上との交信が一時的 に途絶えてしまうまでの間観測データを地上に送信し続けました。ジオット の観測装置はハレー彗星に接近した際、彗星を囲んでいる塵粒子が高速度 で探査機に衝突したため大きなダメージを受け、観測終了後にはすべての 観測装置のスイッチが切られました。

1990年4月、ジオットの観測装置にふただび電源が投入されました。 10個の観測装置のうち、3つは正常に機能していること、4つの観測 装置は一部に障害があるものの使用が可能であること、そしてカメラを 含む残りの3つの観測装置は使用できないことが確認されました。 1990年7月2日、地球に接近し、軌道を変えて7月10日 グリッグ−スキエレラップ彗星に接近して観測に成功しました。

(もっと詳しく知りたい人は、米国宇宙科学データセンターの ホームページ(英語)をご覧ください。)

クレメンタイン (Clementine)
米国国防総省弾道ミサイル防衛局(かつての戦略防衛構想局)と 米国航空宇宙局(NASA)の共同計画により、ローレンスリバモア 研究所で開発されたセンサーの機能確認のために打ち上げられました。 探査機は海軍研究所によって設計・制作され、1994年1月25日に を周回する楕円軌道に向けて打ち上げ られました。クレメンタインは月の表面からの距離を425kmから 2950kmに変化させながら、2ヶ月にわたって詳細な月の地図の作成 の任務を果たしました。探査機に搭載された観測機器のなかには 紫外線から赤外線までをカバーする画像取得装置が含まれており、 その中にはの中緯度地域の高度を測定 することも可能な画像ライダーも あります。1994年5月始めには小惑星 1620 ジオグラフォスに接近して観測を行うための軌道に投入されて 月を周回する軌道から離れることになっていましたが、機器の故障 が発生したため軌道の修正は成功しませんでした。しかし、その後 の努力によってクレメンタインの操作はふただびできるように なりました。今後のクレメンタインの観測計画は現在検討されいる ところです。

(さらに詳しく知りたい人は米国地質調査所(USGS)から提供されている ホームページと米国航空宇宙局(NASA)の惑星データサービスの ホームページ(英語)をご覧ください。)

マーズ・オブザーバ (Mars Observer;火星観測機)
火星表面を1画素あたり1.5mの高解像度カメラを搭載した火星軌道船で 1992年9月25日にタイタン3型ロケットによって打ち上げられました。 1993年8月21日、火星を周回する軌道へ軌道変更するための準備をして いる際、突然地上との交信ができなくなりました。しばらく交信を回復 させるための努力が続けられましたが、ついに計画は断念されました ( 事故調査報告書)。マーズオブザーバが予定していた観測計画は 1996年11月に打ち上げられる予定の マーズグローバルサーベイヤー (Mars Global Surveyor;火星地表測量機) によって引き継がれることになっています。

マゼラン (Magellan)
1989年5月に打ち上げられたマゼランは、 金星表面の98%をカバーする地図を300mよりも細かい解像度で 作成し、金星の表面の95%をカバーする領域の重力分布を詳細に 調べました。主要な任務を終了したのち、80日間にわたる大気 ブレーキプログラムを実行し、軌道を円軌道に近づけながら 軌道高度を下げました。1994年の秋、太陽電池パネルの劣化によって 十分な電力が供給できなくなるまえに、故意に金星大気への突入を 指令し、大気ブレーキのためのさらに詳しいデータの収集を行いました。 このテクニックは、将来の惑星探査ミッションで燃料を大幅に 節減するのに大きく寄与する可能性をもっています。

(もっと詳しく知りたい人は、ジェット推進研究所から提供されている 資料 ホームページ ともうひとつの ホームページ、 米国航空宇宙局(NASA)の惑星データサービスの マジェランのホームページ、米国宇宙化学データセンターからの 資料 (英語)をご覧ください。)

現在任務を遂行中の宇宙探査機

パイオニア10号 (Pioneer 10)、パイオニア11号 (Pioneer 11)、 ボイジャー1号 (Voyager 1)、ボイジャー2号 (Voyagers 2)
これらの探査機は打ち上げから15年間以上(パイオニアは20年以上) を経過してなお正常に機能しており、太陽系の外へと向かって 飛行を続けています。ボイジャー1号と2号はRTG(放射性 同位元素からの発熱を利用した発電機)が十分に電力を供給でき なくなる2015年ころまでは機能を維持することができると 見込まれています。探査機の軌道を詳しく調べた結果では、 これまでのところ冥王星の外に惑星があるという証拠は得られて いません。この次の大きな成果があるとすれば、 ヘリオポーズ(太陽圏の境界) の位置の発見が有力な候補でしょう。ヘリオポーズから放射されると 考えられている低周波電波はボイジャー1号と2号によって検出されて います。

ボイジャー1号と2号は紫外線分光装置を用いて太陽圏の分光観測 を行い、太陽系外からやってくる星間ガス流を詳しく調べています。 また、宇宙線検出器は太陽圏の外縁部における星間宇宙線のエネルギー スペクトルを観測しています。

いまの飛行速度から計算すると、地球からボイジャー1号までの距離は 1998年1月にパイオニア1号までの距離を抜いて最も遠い人造体となります。

(もっと詳しく知りたい人は、ジェット推進研究所から提供されている 資料 (英語)をご覧ください。)

1994年12月1日現在、地球からボイジャー1号までの距離は87億km、 時速61200kmで飛行しています。同じくボイジャー2号までの距離は 67億km、時速57600kmで飛行しています。

ガリレオ (Galileo)
木星の周回軌道にのって観測する軌道船 と木星の大気に突入して大気の様子を観測する観測船から構成されており、 現在木星への軌道を航行中です。軌道船は木星の周回軌道を航行しながら 木星の衛星を詳しく観測し、観測船は木星大気に深さ600kmまで降下し ながらガス型巨大惑星の内部を初めて観測して観測データを送り返してくる 予定です。

ガリレオは木星に向かう途中で、これまで2つの小惑星 951 ガスプラ 243 アイーダの接近写真を地球に送ってきました。 また、シューメーカー−レビー第9彗星の木星への衝突の映像も良い 場所で撮影して送ってきました。

打ち上げが行われたあと、展開式の高利得アンテナの展開に失敗し、 その後アンテナの展開のための試みが繰り返されましたが、ほぼその 望みは絶たれました。実際に現在ガリレオと地上の間の交信に使用されて いる低利得アンテナでは1秒に10ビットの情報しか送受信することが できません。ジェット推進研究所は、通信できる情報量を可能な 限り増やすため、深宇宙ネットワークの受信アンテナの感度を向上 させたりデータの圧縮化技術(画像情報に関してはJPEGに似たデータ 圧縮フォーマットを使用し、その他の観測機器の観測データに関しては 可逆圧縮を行います。)を開発しました。この結果、高利得アンテナが 使用できないとしても、当初予定された観測対象のうち70%の観測を完了 して地上の受信局に観測データを送ることが可能となる見込みとなりました。 ただし、木星大気の運動の長期連続観測のように画像データを多く必要と する観測項目は最も影響を受けてしまいます。

   ガリレオのスケジュール
   ----------------------
   10/18/89 - スペースシャトルからの切り離し
   02/09/90 - 金星の近傍通過
   10/**/90 - 金星の観測データの送信
   12/08/90 - 1回目の地球近傍通過
   05/01/91 - 高利得アンテナの展開に失敗
   07/91 - 06/92 - 1回目の小惑星帯通過
   10/29/91 - 小惑星ガスプラの近傍通過
   12/08/92 - 2回目の地球近傍通過
   05/93 - 11/93 - 2回目の小惑星帯通過
   08/28/93 - 小惑星アイダの近傍通過

   07/13/95 - 大気観測船の切り離し
   07/20/95 - 軌道船の軌道修正

   12/07/95 - 木星とイオに接近;エウロパの近傍通過
   07/04/96 10:01 -  ガニメデに接近(軌道番号1)
   09/06/96 19:01 -  ガニメデに接近(軌道番号2)
   11/04/96 13:30 -  カリストに接近(軌道番号3)
   11/06/96 18:42 -  エウロパに接近(軌道番号3A :カリストに接近する軌道中に
                                    偶然 32,000 km まで接近)
   12/19/96 06:56 -  エウロパに接近(軌道番号4)
   01/20/97 01:13 -  エウロパに接近(軌道番号5A :太陽と木星の方向が一致する
                                    時期に距離 27,400 km まで接近−観測は行わ
                                   ないが、軌道情報はエウロパの重力場の決定
                                   に利用される)
   02/20/97 17:03 -  エウロパに接近(軌道番号6)
   04/04/97 06:00 -  エウロパに接近(軌道番号7A :ガニメデに接近する軌道中に
                                     偶然 23,200 km まで接近)
   04/05/97 07:11 -  ガニメデに接近(軌道番号7)
   05/06/97 12:12 -  カリストに接近(軌道番号8A :ガニメデに接近する軌道中に
                                     偶然 33,500 km まで接近)
   05/07/97 15:57 -  ガニメデに接近(軌道番号8)
   06/25/97 13:48 -  カリストに接近(軌道番号9)
   06/26/97 17:20 -  ガニメデに接近(軌道番号9A :カリストに接近する軌道中に
                                     偶然 80,000 km まで接近)
   09/17/97 00:21 -  カリストに接近(軌道番号10)
   11/06/97 21:47 -  エウロパに接近(軌道番号11)

  (さらに詳しく知りたい人はこちらの詳細をご覧ください。)
1997年6月26日のカリストへの接近と9月17日の接近の間には、ガリレオの 軌道船は太陽の反対側に伸びている木星の磁気圏も通過して観測を行います。 また、木星の環の写真や木星の小さな衛星の写真も撮影します。

ガリレオ4大衛星への最接近距離(比較のためにボイジャーが木星に接近した ときの距離も示します)

               ボイジャー       ガリレオ(計画接近)   ガリレオ(計画外接近)
   イオ          20,570 km           1,000 km                   --
   エウロパ     205,720                588                    23,200
   ガニメデ      62,130                255                    80,000
   カリスト     126,400                416                    33,500
ガリレオのカメラは50000kmの距離から撮影すると分解能が約1kmになります。 したがって、計画外接近(対象となる衛星に接近することが目的でない軌道からの 接近)の場合や計画接近の際の最接近の前後では、衛星全体をおおきくカバーする 視野で500mから2kmの分解能の撮影が可能です。また、計画接近の最接近時 には、中解像度(分解能200m)から高解像度(分解能80m)の画像が10枚から 数百枚程度撮影されます。 ガリレオは『近木点』(木星を周回する楕円軌道上でもっとも木星に接近する 地点)を1995年12月7日にはじめて通過するとき、木星大気中の雲の上 約214000kmの距離を通過します。 磁気テープデータレコーダに関するトラブルのため、最初に木星を周回する 軌道では、イオとエウロパの画像は地上に送信されないことになりました。 そのかわり、イオに接近する軌道が新たにミッションの最後に追加される かもしれません。

(もっと詳しく知りたい人は、米国航空宇宙局(NASA)の 惑星データサービスの ガリレオのページとジェット推進研究所の ガリレオのホームページ ガリレオに関する資料 ニュースレター、 もう一つの ガリレオのホームページ、それと米国国立宇宙科学データセンターの ガリレオ のホームページをご覧ください。)

ハッブル望遠鏡 (Hubble Space Telescope)
1990年4月に地球を周回する軌道上に打ち上げられ、1993年12月に軌道上 で焦点補正のためのレンズを装着するなどの修理が施されました。 ハッブル望遠鏡は宇宙探査機が惑星に接近して撮影する画像に比べる と低い解像度の画像しか撮影できませんが、長い期間にわたって 繰り返し画像やスペクトルを取得できるという大きな利点をもって います。たとえば、最近の観測データから現在の 火星はバイキングが火星で観測を行った時期に比べて気温が低く、 湿度も低いことがわかりました。また、 海王星の大気中の雲の形は急速に変化するということも確かめ られました。

ハッブル望遠鏡の名前はアメリカの天文学者 エドウィンハッブル (Edwin Hubble) にちなんで名づけられたものです。

ハッブル望遠鏡に関するもっと詳しい説明やハッブル望遠鏡が撮影した 画像の数々はスペース テレスコープ科学研究所から公開されています。ハッブル望遠鏡で 撮影された最新の画像 は定期的に更新されています。 ( ハッブル望遠鏡プロジェクトの簡単な歴史(英語)もあります。 また、ジェット推進研究所にも ハッブル望遠鏡のホームページがあります。)

ユリシーズ (Ulysses)
ユリシーズは欧州宇宙機構(ESA)と米国航空宇宙局(NASA)の 共同ミッションで、1990年10月にスペースシャトルディスカバリーに よって打ち上げられました。現在は、太陽 の高緯度地域の上空領域を航行しながら観測を行っています。 打ち上げられたあと、まず木星へと 向かう軌道に投入され、1992年2月に木星の重力を利用して軌道面を 90度近く傾けて黄道面を 離れました。1994年9月中ごろまでに太陽の南緯80度の延長上に まで到達し、1995年6月には黄道面を通過して太陽の北極側に まわりました。ユリシーズの遠日点 の太陽からの距離は5.2天文単位(1天文単位は地球と太陽の間の平均 距離)、近日点の太陽からの 距離は驚くことに1.5天文単位です。そう、つまり、太陽を観測する ための探査機が観測を行う場所は常に地球から太陽までの距離より も遠いのです!ユリシーズによって、太陽の磁場と 太陽風についての理解が深まる ものと期待されています。

(ジェット推進研究所にある ユリシーズのホームページとESA(欧州宇宙機構)にある ホームページ、ジェット推進研究所からの 資料 情報(英語)もご覧ください。)

ウィンド (Wind)
1994年11月1日の打ち上げ後、NASA(米国航空宇宙局)の 人工衛星ウィンドは太陽と地球の間の特等席を利用して太陽風として 知られる巨大なエネルギーと運動量の流れを観測する予定です。

ウィンドの目指す主な科学的成果は、太陽風のエネルギーと運動量を 計測することにあります。太陽風は地球の周囲の宇宙空間環境に影響 を及ぼしています。これまでにもいくつかの観測ミッションで太陽風 の観測は行われてきましたが、太陽風の流れの変化に対して地球の 大気がどのように反応するのかを正確に理解するためには、ウィンド のように大量の観測データを宇宙空間のいろいろな地点で収集する ことが不可欠です。

ウィンドの打ち上げは、ロシアの観測装置がアメリカの探査機に搭載 される史上初めてのケースになります。ロシアのイオフェ研究所で 開発されたコヌスガンマ線分光計はウィンドに搭載される2つの 観測装置のうちの1つで、太陽風の観測ではなくガンマ線バースト の観測を行います。

打ち上げ後、まずウィンドは地球と月の重力を利用して8の字型の 軌道に投入されます。地球から最も遠く離れる地点までの距離は 160万km、最も近づくときの距離は29000km以上になります。

その後、ウィンドは軌道修正を行って地球からの距離を150万km から169万kmの間に保ちながら常に太陽と地球の内側に位置する ことのできる特殊な軌道に投入される予定です。

訳註:ウィンドは1994年11月1日に打ち上げられました。派遣計画に ついての詳しい解説がNASAゴダード宇宙飛行センターの ホームページにあります(英語)。

将来の宇宙探査計画

カッシーニ (Cassini)
土星を周回する軌道船とティタンの 大気に突入して観測を行う大気観測船ホイヘンス (Huygens) から 構成される探査機。カッシーニはNASA(米国航空宇宙局)と ESA(欧州宇宙機構)の共同プロジェクトですカッシーニは タイタン4型/ケンタウルスロケットによって1997年10月に 打ち上げられます。まず金星の重力で加速して、さらにもう一度 金星、そして地球、木星とそれぞれの重力でさらに加速されて土星 へと向かいます。土星に到着するのは2004年6月。土星に到着する 際、数回の軌道修正を行って土星を周回する軌道に投入され、 そこでホイヘンスが切り離されてティタンの大気中に突入します。 ホイヘンスの観測は厚い雲に覆われたティタンの大気を貫くよう にして3時間の間続けられ、観測データは軌道船で中継して地上に 送信されます。その後、軌道船は3年半にわたって土星の 周回軌道を航行し、ティタンに35回、そのほかに イアペトゥスディオネエンケラドゥスといった衛星に次々 と接近します。このミッション(派遣計画)の主な観測目的には、 土星の大気・環・磁気圏の詳しい調査をすること、土星の衛星の クローズアップ写真を撮影すること、ティタンの大気と地表を 詳しく調べることの3つがあります。

計画の初期の段階では、ガリレオアイーダガスプラ に対して行って大成功を修めたのと同じように小惑星への接近も行う 計画でしたが、費用を節約するために断念されました。

ティタンのもっとも興味深い点の一つは、 ティタンの表面が上層大気で起こる光化学反応の結果生じる炭化水素 の湖が形成されていると予測されていることです。大気中で生成された 炭化水素は濃度を増していくとスモッグ層を形成し、ついには雨と なって地表に降り注ぐと考えられます。カッシーニの軌道船に 搭載されるレーダーによって、ティタンの厚い雲を通して地表に 液体が存在するかどうかが調べられます。また、軌道船とホイヘンスの 両方でこの特殊な大気が形成される化学反応過程が調べられます。

	 カッシーニ・ミッションの主なスケジュール(金星-金星-地球-木星ルート)
	 -------------------------------------------------------------
	   10/06/97 - タイタン4型/ケンタウルスロケットによる打ち上げ
	   04/21/98 - 金星重力による加速1回目
	   06/20/99 - 金星重力による加速2回目
	   08/16/99 - 地球重力による加速
	   12/30/00 - 木星重力による加速
	   06/25/04 - 土星到着
	   11/06/04 - ホイヘンスの切り離し
	   11/27/04 - ホイヘンスのタイタン大気突入
	   06/25/08 - ミッションの終了

(もっと詳しく知りたい人はジェット推進研究所の カッシーニホームページ、NASA惑星データシステムの カッシーニホームページ、ジェット推進研究所の 資料、 NASA(米国航空宇宙局)スペースリンクの 資料とホイヘンスのドップラーウィンド実験に関する 説明(英語)を ご覧ください。)

マーズ94 (Mars 94)
ロシアによる火星の探査計画ですが、予算不足が厳しく、1996年に 打ち上げを延期して準備が続けられています。

マーズ96 (Mars 96)
1998年に打ち上げが延期されていますが、十分な予算がロシア政府から 確保できるかどうか疑問視されています。 惑星協会 (The Planetary Society)が開発したマーズバルーン (気球)とマーズローバー(移動式観測車)が搭載されるかも知れません。

マーズサーベイヤー計画 (Mars Surveyor Program)
マーズグローバルサーベイヤーは10年にわたる新しい 火星探査計画の最初のミッションです。 この火星探査計画では火星と地球の距離が接近する周期の26ヶ月ごと に軌道船と着陸船を打ち上げるという壮大な計画です。 個々のミッションはコストを節約し、年間予算約1億ドルで実行 できるように設計されている一方で、最先端宇宙技術の開発に よって一級の科学的成果を生み出しながら火星のクローズアップ 写真や全体写真を撮影します。

マーズグローバルサーベイヤーは火星の極軌道をとり、全球を カバーする地形図を作成し、また鉱物の分布を調べたり火星の 気象を観測するよう設計されています。

1996年11月に米国フロリダ州のケープカナベラルからデルタ2型 ロケットで打ち上げられ、それから10ヵ月かかって火星に到達 (1997年9月)します。火星に到達後はまず火星を周回する 楕円軌道に投入され、燃料の噴射と大気ブレーキングを併用して ほぼ完全な極円軌道にのせられます。大気ブレーキングは マゼランで初めて試みられた技術で、 大気の摩擦力によって探査機の速度を減少させて最終的な軌道に 軌道修正するという方法です。燃料噴射を行わないで火星を 周回する低高度軌道に探査機を投入することが可能で、 ミッションに必要な燃料の量を大幅に節減することができます。 地形図の作成の1998年1月終わりころから開始されるという スケジュールが組まれています。

この探査機は火星の回りを2時間で一周する太陽同期軌道− すなわち太陽を常に地平線の方向に保つ軌道を回ります。 このようにすることで、探査機の直下の地点には太陽光線が 地平線方向から射すことになり、影によって高低の地形がたやすく 判読できるようになります。探査機にはマーズ オブザーバの観測装置が 一部そのまま搭載され、火星の公転 周期(約2年)に相当する期間火星の観測データを取得します。 そして、探査機はそのままデータ中継局として役割を変え、 その後3年間にわたって米国をはじめ各国の着陸船や低高度軌道 の軌道船からの観測データを地上にリレーするようになります。

国際的な計画への参加・協力・調整によりこの計画のすべての ミッションはより強力なものとなるでしょう。マーズグローバル サーベイヤー計画に続く1998年、2001年、2003年、2005年打ち上げ の着陸船は、1996年に打ち上げられる マーズパスファインダーの経験が大いに活かされることでしょう。 1998年と2003年に打ち上げが 行われる小型の軌道観測船には マーズオブザーバに搭載されていたのと同じ観測機器が一部搭載され、 将来のミッションではデータ中継局としての役割を果たすことに なっています。

マーズグローバルサーベイヤーの競争入札によって業者が選定 されて調達されます。科学観測機器は、マーズオブザーバ搭載の 観測機器の複製として制作された装置が政府から業者に供給され、 探査機に組み込まれます。組み込まれる観測機器には、カメラ、 熱放射分光計、超高安定発振器、レーザー高度計、磁気計、 電子反射計、データ中継システムといったものがあります。

ジェット推進研究所はNASA(米国航空宇宙局)太陽系探査部門に かわって計画全体を担当し、ミッションの設計、探査機の管制、 ミッションの遂行を指揮します。探査機の管制と探査機からの観測データ の受信には、世界的に展開された深宇宙ネットワークの34mアンテナ群 が行います。

マーズグローバルサーベイヤーの製作から打ち上げ後30日間までに必要 となる経費の総額はおよそ1億5500万ドルと見積もられています。

(ジェット推進所のマーズ グローバルサーベイヤーのホームページもご覧ください(英語)。)

パスファインダー (Pathfinder)
マーズグローバルサーベイヤーに続く火星探査計画の2つめの ミッションです。当初はMESURパスファインダーという名前の 計画でしたが、パスファインダー以外のMESURミッションは キャンセルされました。

パスファインダーは1億5000万ドルの予算で1994年度にプロジェクトが 開始されました。NASAは低予算で行うことのできる惑星ミッション を計画・実行していくディスカバリー計画をスタートさせましたが、 パスファインダーはその最初のミッションです。

パスファインダーには小型(重さ10kg)の移動式観測車が搭載されて 火星まで運ばれます。NASA(米国航空宇宙局)の先端技術研究室に よって開発が担当されるこの移動式観測車は、火星表面における科学 および技術実験を行う予定です。

パスファインダーは1996年12月2日に打ち上げられ、1997年7月に火星に 到達する予定です。

(もっと詳しく知りたい人は、ジェット推進研究所の ホームページ(英語) をご覧ください。)

プルート・エクスプレス (Pluto Express)
当初はプルート・ファースト・フライバイ計画と呼ばれていました。 比較的少ない予算でこれまで一度も探査機が接近したことのない 冥王星まで短期間で到達する小型の 探査機計画です。1998年の米国政府の予算で計画が認められれば 2001年に打ち上げられます。重さ100kg以下の2つの探査機が タイタン4型/ケンタウルスロケットまたはプロトン (にひょっとしたらもう一段の固体燃料ブースターを追加して)に よって2001年に打ち上げられ、2006年から2008年(到達に要する 年数はどのルートをとるかで変化する)に冥王星とその衛星 カロンに接近します。接近するときの通過速度は秒速12〜18km で、そのときに撮影された画像はいったん探査機に搭載される 記録装置に記録され、その後一年以上かけてゆっくりと地球に 送られます。これは、探査機が小型であるために、送信パワーが 弱くかつ送信アンテナの口径も小さい上に非常に遠距離から送信 されるので、高速なデータ通信ができないことためです。冥王星 の大気を調べるために、探査機からロシアが開発する 『投下ゾンデ』を投下することも検討されています。

冥王星とカロンの地質と地形を調べ、全球にわたる地形図を作成し、 冥王星の大気の様子を調べることが科学的な目標です。冥王星の 大気は冥王星が太陽から遠ざかるにつれて凍りついてなくなって しまうので、冥王星が太陽に最も近づいている現在の好機をとらえて ミッションを早期に実現することが非常に重要です。観測機器の 重量は全体で7kgに制限されますが、そのなかにCCDカメラ、 赤外線分光カメラ、紫外線分光器、それに探査機が冥王星の向こう 側にまわって隠されるときに電波の屈折によって大気の状態を調べる 実験のために必要な機器が搭載機器として提案されています。

プルートエクスプレスの機体はこれまでの外惑星探査に用いられた 探査機に比べるととても小型に設計されています。探査機の 大きさはガリレオ カッシーニと次第に巨大化する傾向にありましたが、その流れは 逆の方向に進むことになりそうです。

機体の設計者によるプルートエクスプレス(プルートファースト フライバイ)に関する記事が惑星協会 (The Planetary Society)の発行している隔月刊誌 『The Planetary Report』の1994年9/10月号に掲載されています。

この計画が実際に認められるかどうかは非常に微妙です。

(もっと詳しく知りたい人はNASA(米国航空宇宙局)の ホームページまたはジェット推進研究所の ホームページ(英語) をご覧ください。)

NEAR
NEARは Near Earth Asteroid Rendezvous (近地球軌道 小惑星ランデブー)計画の頭文字をとったものです。 地球に接近する軌道をもった 小惑星彗星に関する謎を 解明してそれらの性質を詳しく調べるための計画です。

1996年2月にデルタ2型ロケットによって打ち上げられ、1999年 1月はじめに小惑星433 エロスに近い軌道に到達します。 NEARはそこで最低一年間にわたって24kmの距離にまで 近づいて小惑星の岩石を調査します。小惑星エロスは地球に 接近する軌道をもつ小惑星のうちで最も大きい部類に属し、 これまでにも地上からよく観測されています。近地球小惑星と 小惑星帯(火星軌道と木星軌道にはさまれたドーナツ状の軌道帯) に属する大多数の小惑星は性質的によく似ています。

(もっと詳しく知りたい人は米国宇宙科学データセンターの ホームページ(英語)をご覧ください。)

マーキュリーポーラーフライバイ (Mercury Polar Flyby)
水星が近年またあらためて注目されるようになり、現在水星を 観測対象とするミッションが2つディスカバリー計画に 提案されています。ディスカバリー計画はNASA (米国航空宇宙局)の『もっと安く、もっと短期間で、もっと すばらしい成果』を達成しようというスローガンで始まった 新しい惑星探査計画です。この計画に選ばれるミッションは 総費用1億5000万ドルで行うという制限が設けられています。 この2つの水星探査計画は マーキュリーポーラーフライバイ(MPF)とエルメス (Hermes:水星周回軌道観測船)です。MPFの観測機器 には中性子分光装置(水の存在を検出する観測装置)、 複偏波レーダー(水星表面の氷の分布を調べる)、カメラ (マリナー10号で撮影された半球の裏側の半球や極地域の 画像を撮影する)などがあります。このミッションはほかの ディスカバリー計画に提案されているミッションに比べても 費用が少なく、技術的にも十分実現可能なミッションで あると提案者は胸をはっています。MPFの軌道は水星が 遠日点に位置するときにだけ何度も繰り返して水星に接近 するように選ばれます。水星の軌道は離心率が大きく、 近日点では太陽からの輻射熱は地球でうける輻射熱の11倍 にも達するのに対して遠日点では4倍程度と大きな差が あります。水星の遠日点でのみ水星に接近するようにする ことで、大きな輻射熱を避けることが可能となり、複雑な (そして開発費用の高い)冷却装置や熱シールドを省くことが できます。

エルメスはジェット推進研究所とTRWの共同ミッションです。 もしこのミッションが採択されれば1999年に打ち上げが行われます。

(とくに明記されていない場合はNASA(米国航空宇宙局)による ミッションです。)

写真

  1. (このホームページ最初の写真)ボイジャー gif
  2. マリナー2号 gif
  3. マリナー4号 gif
  4. マリナー5号 gif
  5. マリナー6号と7号 gif

  6. マリナー10号 121k gif

  7. サーベイヤー gif

  8. バイキング gif

  9. マゼラン gif

  10. ガリレオ gif

  11. クレメンタイン 172k gif
  12. その他の深宇宙探査機の写真

ムービー

  1. サターン5型ロケット(アポロ11号)の打ち上げ 570k quicktime
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宇宙探査機についてもっと詳しく知りたいとき

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ビル・アーネット著;1995年10月27日更新
小山 泰弘   訳;1995年10月31日更新